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SunoとUMG・Sonyが著作権交渉で暗礁——AI音楽の「許諾なし学習」問題が業界全体に波及

AI音楽生成スタートアップのSunoが、Universal Music GroupとSony Music Entertainmentとのライセンス交渉で合意に達していないことが2026年4月に報じられた。Suno側はAI生成楽曲をプラットフォームで共有できる仕組みを求めているが、両レーベルはAIが無許諾で著作権楽曲を学習していることへの懸念を主な理由に抵抗している。

ソース: The Verge / Financial Times原文を読む →
SunoとUMG・Sonyが著作権交渉で暗礁——AI音楽の「許諾なし学習」問題が業界全体に波及

AIを活用した音楽生成ツールを提供するSunoが、世界最大の音楽レーベルUniversal Music Group(UMG)とSony Music Entertainmentとのライセンス交渉で暗礁に乗り上げていることが、Financial Timesの報道をThe Vergeが引用する形で2026年4月7日に明らかになった。Sunoはユーザーが生成したAI音楽を外部プラットフォームで共有できるよう許諾を求めているが、両レーベルは「許諾なしに著作権保護された楽曲を学習に使用した」との懸念を理由に難色を示しているという。

この交渉の膠着は、AI企業と著作権者の対立がいよいよ「和解フェーズ」に移行しつつある中での逆流を示している。Deep Signalでは以前、Anthropicが国防総省のClaude利用禁止に対し仮処分命令を獲得した事例(「Anthropic、国防総省のClaude利用禁止に対し仮処分命令を獲得」)を取り上げたが、AIをめぐる法廷・交渉の戦線はテキストから音楽・画像へと広がる一方だ。

Sunoとは何か——AI音楽生成の先駆者

Sunoは2022年に設立されたケンブリッジ発のスタートアップで、テキストプロンプトから高品質な楽曲(ボーカル付き)を生成できるAIモデル「Suno v4」を提供している。2024年のリリース以降、その品質の高さから急速に普及し、月間アクティブユーザーは数百万人規模とも言われる。Microsoft Copilotへの統合も実現しており、AIツール市場での存在感は大きい。

問題は学習データだ。Sunoのモデルは大量の楽曲データで学習されているが、UMGやSony Music傘下のアーティストが著作権を持つ楽曲が無許諾で含まれているという疑惑が当初から指摘されていた。2024年6月、UMGを含む米国の主要レーベル3社がSunoとUdioを著作権侵害で提訴。この訴訟はSunoが和解金を支払うことで2025年に決着したとされているが、和解内容の詳細は非公開だ。

交渉が難航する構造的理由

今回の報道が示すのは、和解後も根本的な溝が埋まっていないという事実だ。SunoはSpotifyやYouTubeといったプラットフォームでユーザーがAI生成楽曲を共有できるよう、レーベル側の許諾を得ようとしている。しかしレーベル側には2つの懸念がある。

第一の懸念は「前例」だ。Sunoと許諾契約を結ぶことで、「AIによる無許諾学習→和解→許諾契約」というパターンを業界標準として認めることになりかねない。これは他のAI音楽・画像・映像生成企業にとっての先例になり、著作権者の交渉力を著しく弱体化させる。Meta・Googleのソーシャルメディア依存症訴訟で陪審員が「過失あり」を認定した判決(「Meta・Googleが陪審員評決で『過失あり』——ソーシャルメディア依存症訴訟の分水嶺」)が業界に与えた衝撃と同様に、AIと著作権の判例作りは業界全体の利害に直結する。

第二の懸念は「収益配分」だ。レーベルはAI生成楽曲がSpotify等で再生されるとき、人間アーティストの楽曲と同等の扱いを受けることへの強い抵抗感を持つ。SpotifyがAI生成楽曲のストリーミング収益をどう扱うかについての業界コンセンサスもまだ形成されていない。

他のAI音楽企業への波及

SunoとUdioが訴訟・和解を経験した後も、AI音楽生成市場は拡大を続けている。Google DeepMindのLyria、Metaの AudioCraft、Stability AIのStable Audio等が競合として存在するほか、Sunoよりも後発のスタートアップが次々と参入している。これらの企業が同様の著作権交渉を迫られるのは時間の問題だ。

レーベル側はすでに「ライセンスファースト」の姿勢を強めており、WMGはYouTube、Googleと個別のAIライセンス契約を結んでいる。ユニバーサルも独自の「AI音楽倫理原則」を公表し、学習データへの許諾を前提としたAI音楽の「公認」を推進しようとしている。問題は、「許諾ありの学習データ」でトレーニングしたモデルが、「無許諾データ」を使ったモデルと競争できるほどの品質を持てるかどうかだ。

法的・政策的展望

米国著作権局は2025年に「AIと著作権」に関する報告書を公表し、AI学習における著作物の使用は「フェアユース」の範囲で検討されるべきだとする一方、生成物の商業利用には別途考慮が必要との見解を示している。EU AI ActのGPAI規制でも学習データの著作権コンプライアンスに関する透明性義務が設けられており、国際的な規制の方向性は「許諾なし学習の見直し」に向かいつつある。

Sunoの交渉が今後どう決着するかは、AI音楽業界だけでなく、AIと著作権の関係全体に影響する試金石となる。「許諾なし学習→事後和解」モデルの持続可能性が問われる局面に入っている。

#Suno#著作権#AI音楽#UMG#ライセンス#訴訟

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